mooviee blog

見た映画の感想をさかのぼって書いています。

A LITTLE CHAOS(2015) ヴェルサイユの宮廷庭師

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A LITTLE CHAOS (2015)

Director:Alan Rickman

 

17世紀フランス国王ルイ14世から宮殿の増改築で庭園を任された実在の建築家、

アンドレ・ル・ノートルと、女性庭師のサビーヌ・ド・バラのロマンスを描いた映画です。

ル・ノートル氏は実在しますが、ストーリー自体はフィクションのようです。

こんな話あったら素敵よね、的な感じのお話ですが、

ヒロインに悲しい過去があったりと、話の奥行きもそれなりにあります。

 

 

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アラン・リックマン監督としての遺作

ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ教授でおなじみのアラン・リックマン

彼の経歴はとても面白く、もとはグラフィックデザイナーでした。(私と同じ!)

それから舞台俳優を経て、あのテロリスト役がスクリーンデビューだそうです。

アラン・リックマンは今作が監督として2作目でした。

構想に10年ほどかかってようやくヒロイン役のケイトが年齢相応になったとインタビューでも答えていたように、この作品は以前から温めていたのに、

スネイプ教授役で大忙しだったんでしょうね。

監督としては今作が、そして俳優としては『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』を遺作として、2016年1月に69歳で他界してしまいました。

彼にもっと時間があれば、監督(今作のように脚本なども)として作品をもっと残していただろうなと思いました。

インタビューでも、「また監督をやりたい」と答えていた矢先の事でした。

本当に残念でなりません。

 

 

既成概念にとらわれない

この作品の大きなテーマとして、ル・ノートルとサビーヌの造園するにあたっての

景観の「秩序」について意見が食い違うシーンがあります。

 

"Are you a believer in order?"

「(景観の)“秩序”を重んじているか?」

の問いに対して、

"Order seems to demand we look back to Rome or to the Renaissance. 

What I'm saying...surely there is something uniquely French as ye not celebrated by us

witch needs the rules of order to attain it."

「“秩序”とはローマ時代やルネサンスのもの。

我々フランス人ならではの美的感覚を追求するべきでは?

つまり新たな“秩序”です」

とサビーヌは答えます。

ここが、アラン・リックマン監督がこの映画のポイントという部分と重なるところだと思いました。

この時代に女性が手に職をつけてキャリアを築いていく事など不可能で、

彼女の存在自体がありえないこと。

でもその「ありえなさ」がこの映画のポイントで、

ル・ノートル氏が掲げる秩序や規則といった既成概念の中に

サビーヌの存在が入ることで新たな秩序、新たな美を生むのです。

 

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ル・ノートル氏がサビーヌの家を訪れると、彼の中の既成概念も変わります。

この映画で一番好きなシーンです。

サビーヌが作る自由で、無作為で、混沌とした庭園の美しさを目の当たりにして、

新たな秩序、新たな美を見出します。

映画の中で実はあまり庭園のシーンがない中、

彼女の部屋の庭は可愛らしくてナチュラルで美しくて溢れんばかりのカオスで

とてもいい感じです。

後に泥まみれになってしまった庭園を見たルイ14世を説得する場面で、

"There's no precedent for Madame de Barra's vision.

Trust is all we can give  those who reach into the new, sire.

But when beauty can be described with such imagination,

then her art, above all I know..."

「今までにない世界観です。

新たな地平を拓く者を信じましょう。

豊かな想像力が生む“美”、

彼女は誰よりも優れている。」

と彼女をフォローします。

このセリフに出てくる豊かな想像力、今までにない世界観、美、

というものを、彼女の庭を訪れたこの時に見出します。

が、実はさらにいうと!

 ル・ノートル氏が彼女の才能や美を見出すのは

実はもっと最初の、初めて彼女を見た時からだったということを

後でサラッと言っています(DVDの日本語字幕には反映されていませんが)。

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このシーンです。

 

長々と書きましたが、この既成概念にとらわれない、女性がキャリアを築くことも

新たな試みをするのも、現代に当てはめることができるということを

アラン・リックマン監督は言いたいんだと思います。

 

 

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 なんといってもマティアス

マティアス・スーナールツが、かっこいい。

クラシカルな顔立ちなのか、時代背景もわりと古い映画が

よく似合う気がします。

寡黙で繊細な感じがまたいい。

この作品のようにロングヘアでもかっこいい。

とにかくかっこいいです。

ベルギーの俳優さんですが、監督が言うように英語が完璧です。

インタビューだと本当に流暢に英語を話しています。

もう絶対ハマるだろうなという理由でまだ『君と歩く世界』を観ていません。

きっと『フランス組曲』とかもかっこいいんだろうなぁ。。